私たちは、Tシャツなどへのプリントを主な事業としています。もともとは着物の染め物を行っていましたが、時代と需要の変化に伴い、プリント業に転身しました。

■取引先を広げ、年間の仕事量を平準化
以前はアパレル商社からの仕事がほとんどで、繁忙期と閑散期の差が激しく、繁忙期には無理な注文に応えるための残業も多くなっていました。年間の仕事量を平準化するために取り組んだのが、取引先を広げることです。現在では文化祭のスタッフTシャツ、テーマパークやアーティストのグッズ、野外フェスのTシャツなど、全国からさまざまな仕事を受注しています。
デザインデータ作成からプリント、縫製、プレス、仕上げまで一貫して自社で行うことで、小ロットから大量注文まで迅速に対応することができます。

私たちの経営理念は「繋がりを軸に一人ひとり光輝く未来を」。人のつながりを大事にし、人こそが私たちの魅力だと考えています。例えば、水性インクでオーダーされた色を出すために、人が一滴単位で色を調整しています。各工程に熟練の職人がいることが、品質やスピードにつながっています。

■多様な人が働きやすい会社に
坂口捺染では、出退勤時間を自由に決められるフレックスタイム制を導入しています。子育て中の方や介護を担う方、高齢の方など、さまざまな事情を持つ人が働きやすい環境を整えています。​
それを実現するために、一人ひとりに複数の仕事を覚えてもらい、できる仕事の範囲を広げています。
これによって、出勤人数や業務内容に応じて柔軟に人員配置を行えるようになりました。お休みされる方がいても、その日の仕事を通常通り回せるようになっているのです。

他にも、一部の工場ではより柔軟に働ける業務委託制度を導入したり、プリントの仕事が体力的に難しくなった高齢の方はオリジナルブランドの縫製で活躍できるようにしたりもしています。

こうしたことが実現できるのは、社員が部下やパート社員の一人ひとりと向き合うことを大切にしているからです。なかでも、社長は社員200人以上の顔と名前、その家族、悩みごとを把握しています。

さまざまな取り組みの結果、2014年に現社長が就任してから、15名だった社員は約200名に増え、売上は約20倍になりました。
こうした実績やさまざまな取り組み、社長の手腕、さらに以下に述べる新たな挑戦などが注目され、メディアに登場する機会も増えています。そうしたことも影響して、現在では営業をしなくても依頼をいただけることが多くなっています。

■複合施設をオープン、地域にとってなくてはならない存在に
コロナ禍で売上が90%以上落ちたとき、私たちは医療用ガウンの検品などの仕事を引き受け、コロナ禍で仕事を失った人も受け入れました。それが軌道に乗り、半年後にはコロナ前の売上を超えるほどになりました。
こうした経験から、私たちは社員だけでなく、より多くの人の助けとなるような仕事を意識しています。

2021年には、会社の一角に駄菓子屋を設けました。コロナ禍で遊び場を失った子どもたちの居場所をつくり、子供が遊べる場を作りました。立ち上げ当初の1年は、買い出しから社長が誰よりも率先して動くことで、今では子供たちが集う場になりました。

2024年には、複合施設「The West Riverside（TWR）」をオープン。駄菓子屋のほか、カフェやオリジナルブランドの洋服のショップなどが入っており、子どもと地域の高齢者が交流する場になっています。

他にも、花火や餅つき大会など、地域の人が参加できるイベントを実施しています。
また、毎週木曜日に社内で実施しているピラティスは、私たちの社員だけでなく、地域の人も自由に参加することができます。社員の福利厚生のために始めたことも、社員だけが利益を享受するのではなく、地域に開放することにしました。

地域の方に私たちのことを知ってもらうことで、最近では求人で有料媒体を使わなくても応募が集まり、私たちの雰囲気に合う方を採用できています。
またこれらの活動を通して、地域に愛され、なくてはならない存在になることは、社員が誇りを持って働けることにもつながります。