2025年07月22日(火)
利用者の「その人らしさ」を大切に サンホーム豊田の支援と工夫
2025年07月22日(火)

■非営利団体でありながらも、よりよいサービス提供の工夫を続ける姿勢
サンホーム豊田は、平成11年に障がいを持つ方々のために開設された障がい者支援施設であり、主に生活支援や地域交流などの活動を行っています。皆さんは、「知的障がい者の定義」をご存じでしょうか?知的障がい者とは、「知的機能(IQ)に制限があり、社会性・コミュニケーション・自立などの日常生活における適応能力にも困難を伴う状態で、18歳未満でその状態が現れた人」を指します。知的障がい者は、IQによって分類されます。最も軽度な障がいがIQ70未満とされる中で、サンホーム豊田ではIQ35以下の重度の障がいを持つ方が多く入居しています。入居者の平均年齢は約54歳で、定員60名に対し、強度行動障がいを持つ方が39名います。
ここで最も重要なのは、サンホーム豊田は非営利団体であり、限られた収益で運営しているという点です。収益の約6割以上が人件費に充てられているため、経営における柔軟性が制限されています。このような状況下で、最近の物価高、特に食費の高騰は、施設運営にとって非常に大きな影響を及ぼしています。しかし、その中でも残りの資金で設備投資をしたり、サービスのさらなる向上に努めるなど様々な工夫をされています。
■利用者一人ひとりの「できる」を引き出す工夫
サンホーム豊田では入居者の方に向けた様々な工夫を施しています。工夫の1つは障がいの度合いに合わせた生活支援を行えるよう花、鳥、風、月というグループに分けされているという点です。
- 花グループ:日常のマナーを学習する活動
- 鳥グループ:高齢者が多いため筋力維持を目的とした体を動かす活動
- 風グループ:自立課題を主とした活動
- 月グループ:感覚刺激を目的とした活動
このほかにも、入居者一人ひとりの可能性を引き出す工夫が施設内の随所に見られました。例えば食堂では床にテープを張る工夫がされています。このテープは、掃除をする際に「掃除すべき範囲」を明確に伝えるためのものです。範囲が決まっていないと、再現なく掃除してしまい効率が落ちてしまうことがありますが、この方法により、掃除作業がより効率的に行えるようにしています。
食堂の床にテープを張る工夫
ほかにも数を数える、袋詰めなどの軽作業は得意分野に合わせて分業したり、広々とした空間が苦手な人のために施設内のところどころに個人スペースやスヌーズレンと呼ばれる暗い空間を設置することで入居者の心を安定させるためのスペースが設けられているなど入居者の一人ひとりの特性に応じた支援より、可能性を引き出すことができるそうです。
- スヌーズレン
- 月グループの自立課題
■大変だけじゃない、支援という仕事
福祉の仕事に対して「大変そう、きつそう」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。多くの人は日常的に福祉施設と関わることが無く、イメージやニュースで報道されている印象だけで考えてしまうと思います。しかし、実際には「大変」だけの仕事ではなく、特に障がい者支援施設では、大きなやりがいを感じている職員の方が多くいました。
職員の方々は、利用者一人ひとりに対して、個別支援計画を立て、その達成を目標に日々の支援に取り組んでいます。利用者の方にとって効果的な支援を職員の方々が日々模索し、玄関に水槽を設置してエサやりを日課にするなど、様々な新しい支援を提案されていました。責任者の方もその提案を前向きに受け止めており、現場全体が一丸となって支援されている様子がとても印象的でした。職員の方にとっては、利用者一人ひとりに寄り添った支援を行い、変化が見られた時や日々の支援の積み重ねが、利用者の方からの信頼につながることも大きなやりがいにつながっていると仰っていました。
障がい者支援施設では、職員の方を「支援員」と呼びます。高齢者施設では、年を重ねることでできなくなったことをサポートする「介護」が中心となりますが、障がい者支援施設では、たとえ今はできなくても、工夫を重ねることで「できる可能性」を引き出す「支援」が大切にされています。支援の仕事は、決して楽なものではありませんが、自分自身の工夫や関わり方によって、利用者さんの生活に前向きな変化をもたらすことができる、やりがいのある仕事です。
皆さんは、「誰かの可能性を支える仕事」に、どんな魅力を感じますか?
<企画概要>
とよた市みんなの人事部×名城大学経済学部×東海ヒトシゴト図鑑
学生が企業の“戦略”に迫る、実践的フィールドワークプログラム
本記事は名城大学経済学部の「社会フィールドワークI・II」の受講生が取材・記事執筆を行いました!
学生の視点で産業構造や事業の強みを分析し、魅力を深掘りした内容になっています。
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