有限会社ノヨリは1970年に創業した神仏飾金具を製造する企業です。
「相手にとって一番良いもの（こと）を」を企業理念に掲げ、5人（2023年4月現在）の従業員とともに事業を展開しています。

主な事業内容はかざり（錺）金具の製造で、仏具や神具、祭礼具に用いられる装飾金具を取り扱っています。お客様となるのは主に寺院で、問屋経由で販売しています。
初代で現会長の祖父、二代目の父と、一度は会社員を経験した娘、親子三代で事業に取り組んでおり、「名古屋城本丸御殿」の復元事業の錺金具製造を手掛けるなど、名古屋市内はじめ愛知県内の寺院、神社、お祭りの山車や神輿の装飾金具製造を支えています。

しかし近年は仏壇など「日常の中の仏具」の需要が減少しており、仏具の仕事はなくならないが事業としては先細り。後世へ技術を残すためには時代の変化に合わせた新たな挑戦も必要だと考え、日々試行錯誤を続けています。
その挑戦の一つとして、もっと多くの方に身近に感じてもらえるようかざり金具に用いられる伝統技法を落とし込み、トレンドと掛け合わせたアクセサリーの製造・販売に取り組んでいます。

■尾張仏具とは
ノヨリがある愛知県名古屋市を中心に製造されている仏具は「尾張仏具」と呼ばれ、現在でも多くの職人が製造に携わっています。「尾張仏具」は細かく部分ごとに分業されているのが特徴で、木地製造・彫刻・下地・漆塗り・彩色・錺金具・蒔絵の1,000以上もあるパーツを組み合わせて製作します。
当社の強みは、このような長年培ってきた職人技術と、一つ一つの仏具に込める想いです。
企業理念として掲げる「相手にとって一番良いもの（こと）を」には、 「完璧な商品を作り上げるのは当たり前、作業工程を把握し次の人がどういう状態で受け取ったら仕事がやりやすいか（社内社外共に）を考え行動する」という思いを込めています。
この「細かいところこそ丁寧に」という想いはアクセサリーの製造にも通じていて、 ぱっと見では見えない中の部分も「もし壊れて中が見えたときに汚かったらお客様も嫌な気持ちになるだろう」と、丁寧に作りあげています。

■昔ながらの職人気質からの変化
これまで父がメインで運営していた仏具・アクセサリーの制作ですが、娘の私が入ってからは感覚に頼らない運営を心掛けています。
紙のカレンダーに手書きで書いていた予定はGoogleカレンダーに変更し、売れた分だけ製作し常に同じ数だけあったアクセサリーの在庫も、売れ行きに合わせて調整できるような管理方法に変更されました。 まだまだアナログなところが多い運営体制ですが、少しずつ効率化し、もっとやりたいと思っていることに手をつけられたらと思っています。

■職人一人一人が活躍できるように…
問屋を介した流通以外が好まれない産業の構造や、社会情勢の変化の中で産業全体が右肩下がりであることなど職人の世界は厳しさを増しています。
その中でも職人一人一人が本来の技術を存分に発揮し、活躍できるような環境を作っていかなければと考えています。

■国内のみならず、海外を見据えて
昔から続いている錺金具を引き続き守っていくことはもちろんのこと、新しく挑戦しているアクセサリーの販売も錺金具と同程度の売上を立てられるように軌道に乗せていきたいです。
アクセサリーはインターネットからの購入が多いため、よりスムーズに購入できるよう自社のECサイトを立ち上げ、さらには海外から購入いただくことを見据えた仕様に変更しました。 今後は日本の伝統を海外へより広めていけるような取り組みもしていきたいと考えています。

親子でやっているからこそ、言いづらいようなことも本音で言えたり、億劫に感じる新しい取り組みについても、娘が言うからと受け入れてくれている気がします。プライベートで家族で出かけても、ふと新しいアイテムについて考えていて、雑談から仕事の話になっていくこともしばしばあります。
祖父、父が繋いできた伝統に、私の感性を加えて、これからも新しい商品を作っていきます。