■都市とは違う時の流れの中で働く、新しい暮らしを体感
私たちは、岐阜県美濃市の「うだつの上がる町並み」をフィールドとする地域分散型シェアオフィスです。

美濃市は岐阜県の中央部に位置する、面積117㎢、人口約2万人のコンパクトなまち。名古屋から車で約50分とアクセスがいいのですが、名古屋とは時の流れが違います。自然に恵まれ、美濃和紙をはじめとする伝統文化が息づき、昔ながらの人のつながりも根付いている。そんなまちで、働くことと暮らすことを両立させることで、人間としての「ゆたかさ」を実現できるのではないかと考えています。

建物は築約150年の古民家を改修したもの。1階にはコワーキングスペース、2階にはプライベートオフィス、個室などがあります。ゲストハウスも併設しており、滞在しながら利用することも可能です。

まちごとシェアオフィスWASITA MINO（以下WASITA）のひとつの特徴として「まちごとワークタンブラー」という仕組みがあります。利用会員特典のオリジナルタンブラーを近隣の7つの提携店舗で提示すると、その店舗内でも仕事ができ、コーヒー一杯無料などのサービスを受けることができます。お店の人もWASITAの会員だとわかって話しかけてくれるなど、本当に美濃で暮らしているような体験ができるのです。

■事業創出プログラムで継続的なつながりを
私たちは「次の一歩を応援し合えるコミュニティ」をつくりたいと考えています。美濃市は県内の他市町村に比べても、挑戦している人がまだまだ少ないです。WASITAで美濃の外の人と中の人が入り混じる中で、応援し合えるような仲間を増やし、地域に人と経済の循環を生みたいのです。

これまでWASITAをきっかけに、入居企業様が地域で社員を雇用したり、美濃市と連携協定を締結してDX人材を派遣したりといった動きが生まれてきました。また、美濃の体験コンテンツを造成して販売する実証実験も行いましたが、一回だけの体験プログラムだと、継続的に美濃に来てもらうのは難しいと実感しました。

そこで現在力を入れているのが、地域満喫型ローカルビジネス創出プログラム「UDATSU BITO」です。このプログラムでは、まず参加者に美濃へ数回来てもらい、地域資源を満喫してもらいます。美濃で挑戦している人や、既に岐阜の起業家として活躍されている方の話を聞く機会も用意しています。さらに、オンラインで事業創出ワークショップを受講しながら、ローカルビジネスのアイデアを事業計画にまで落とし込み、美濃で発表会を行います。
参加者の居住地域や職業は多様。他の参加者の事業のサポートをしたい人も参加可能で、参加者同士のつながりも生まれています。

「UDATSU BITO」のプログラムは、来年も継続して開催予定なので、興味のある方はぜひご参加ください。

他にも、学生が地域に住みながら学ぶプログラム「岐阜住学」の参加者受け入れを行ったり、（株）キッチハイクと美濃市が連携して始めた「保育園留学」のコワーキング拠点としても活用いただいております。

■美濃での働き方の選択肢を増やしたい
「UDATSU BITO」は個人向けですが、新たに法人向けの研修プログラム造成にも取り組んでいます。
また今後は、美濃の企業と連携した取り組みも行いたいと考えています。市内には大学がないので、進学の際に離れる人も多いですが、高校まで美濃市にいる間にさまざまな働き方の選択肢を知っておけば、将来的に戻ってきてくれたり、二拠点居住を考えてくれたりするのではないかと思います。他の機関とも連携しながら、インターンシップなど、企業で試しに働けるような仕組みを考えていきたいです。

■まちの会話量を増やしたい
私たちは地域の人との関係性も大切にしています。地域の方向けに、WASITA裏にある芝生でヨガを開催したり、会議室でお茶会を開いたりと、地域の人とオフィス利用者が交わるきっかけをつくっています。「まちごとワークタンブラー」には、町全体で盛り上がっていきたいという想いも込められています。

最近は「まちの会話量を増やす」ことを意識しています。人のつながりの濃いこの地域でも、新型コロナの影響でご近所同士の会話が減っているようです。しかし、「こういうことやりたいんだよね」などと本音が出るのは、たわいもない会話の中のはず。WASITAの内外で、そんな会話を増やしていきたいと思います。