■自然環境リテラシーを学び、広める
「自然環境リテラシー」という言葉をご存知でしょうか。これは簡単にいうと、自然の豊かさや素晴らしさを体験・実感し、自然の中（＝アウトドア）で安全に活動する知識や知恵を習得し、人々に伝える力のことです（※１）。
この自然環境リテラシーを地域に、日本に、世界に広めていきたいというのが、私たちの活動目的です。

※１　正式には、「自然環境が私たちに与える影響、私たちが自然環境に与える影響について総合的に理解し、自然の中での諸活動の安全管理・リスク管理・危機管理の知識・技術を習得し、これらを他者に分かりやすく伝達できる能力」のこと。

NELCrew（ネルクルー）は、三重大学で行われていた実習「自然環境リテラシー学」を受講した学生が活動を続けていく中で、社会の中で自然環境リテラシーをより広範に広めていこうと設立した学生ベンチャー（2022年6月設立、一般社団法人）です。
NELCrewとは、Natural Environmental Literacy Crew（自然環境リテラシーのクルー）という意味です。

世界中で地球環境問題や持続可能な社会の実現など、社会課題の解決が叫ばれていますが、それが自分ごとになっていない現状があると思います。

その背景の一つには「実体験の欠如」が挙げられます。私たちが拠点とする三重県でも、山と海の距離が近く、自然の魅力がぎゅっと詰まった地域ですら、海に入ったことがない、山で遊んだことがない子どもたちが多くいます。大人から「危ないから自然の中で遊んじゃだめ」と言われていることが多いのです。親や先生の世代も同様です。

地球温暖化問題や身近な環境問題を自分ごととして捉えるには、自然を体感・実感し「こんな景色が大事、残したい」という思いを持つこと、「自然の中での自分、自分の中での自然」を自分の中で持つこと（＝自然環境リテラシーの基本的なこと）が必要だと思います。

私たちは、生の体験、実体験を通して、「自然の中の自分、自分の中の自然」を理解し、守りたい自然、大切にしたい自然を自分の中にもてる人を増やすための自然体験プログラムを提供しています。自然環境リテラシーを学び・広めて、豊かな自然あふれる地域の子どもたちや大人たち、そして、自然から遠く離れた都会の人々に、豊かな自然と触れ合う機会、アウトドアでの活動を提供し、自然と共に生きる人々を一人でも多く増やしたいのです。

■自然の魅力・アウトドアでの安全管理、環境について伝えられるリーダーを育成する
東海圏には、海山川、どれをとっても豊かな自然がたくさんあり、観光客や訪問客を受け入れていくポテンシャルがあります。
自然あふれる地域を訪れてもらって、その魅力を伝えるためには、自然について正しい知識をもち、安全に活動することのできる技術や知恵をもった人が必要です。自然の中で安全に怪我なく遊んだり体験したりするために必要となるのが、「どこが危険なのか」、「どうしたら安全に遊べるのか」を知り、一緒に自然の中で遊んでくれる、自然体験のリーダー的な存在です。

NELCrewでは、自然体験リーダーの育成に取り組んでいます。メンバーは、シーカヤックやスタンドアップパドルボード（SUP）の指導者資格を取得したり、日々トレーニングを行って、知識や技術を高める努力をしています。
こうした人材の育成を通して、子どもたちや地域の人、そして三重を訪れる人に、三重の自然と触れ合う機会をつくっていきたいと考えています。

現在は次のような、自然を体感するプログラムや、リーダー育成のプログラムを実施しています。

１）自然と親しむ、ビギナー向け体験プログラム（カヤック体験など）
２）自然の中で思いきり遊ぶ教育旅行プログラム（旅行会社と連携した親子向けプログラム、高校生向けプログラムなど）
３）学校教育の中で、探究学習などと関連させながら、自然の中での実体験を通して自然環境リテラシーを学ぶ自然環境教育プログラム
４）自然環境リテラシー、特に自然の中での判断力、計画力や、安全・リスク・危機管理などを身につけ、他の人にも発信・伝達できるような自然体験のリーダーを育てる、自然環境リーダー育成プログラム（NEL-Basicプログラムなど）

豊かな自然を生かした観光産業の創出を目指し、観光客を受け入れる自然体験リーダーを「みえアウトドアヤングサポーター」として育成する三重県との連携事業もあり、私たちのメンバーもサポーターとして県に認定されています。

■自然と共に生きる地域社会の実現
私たちが目指しているのは「自然と共に生きる地域社会」の実現です。
自然環境リテラシーを学んだ大学生が地域に入り、その地域で生まれ育った子どもたちや、普段は自然に触れることが少ない都会の子どもたちに、自然体験プログラムを提供します。
大学生が「ここは素敵だねえ〜」というと、普段は当たり前で「何にもない」と思っていた、自分の住む地域を「え？ そうなん？ うちの地域はすごいん？」と思うようになる。自分の地域の自然の素晴らしさに気づくのです。当たり前すぎて普通の自然が、特別な自然に変わります。

そのような発見をする中で、自分の地域が好きになる子どもが生まれています。
そんな子どもたちを見て、大人も変わります。こうして、自然と共に生きる地域社会に向けたシフトチェンジが生まれると思います。