2026年06月25日(木)
「タイルの聖地」の雇用を守り、職人技を絶やさない。タイルの存在価値そのものを高める
2026年06月25日(木)
かつて日本の景観を鮮やかに彩ってきたタイル。国内シェアの約9割を占めるタイルの聖地が、岐阜県東濃地方です。この地域では、数多くの工場が立ち並び、多くの家族がタイルの製造や流通に関わって生計を立ててきました。まさに、「町全体の暮らし」を支えてきた基幹産業です。
しかし現在、安価な輸入品の台頭により、この地場産業は衰退の危機に直面しています。工場の閉鎖は、単に建物がなくなることではなく、そこで働く人々の職が失われることを意味します。
今、タイル産業を守ることは大きな二つの意味を持ちます。一つは、地域の人々の生活(雇用)を直接守ること。そしてもう一つは、日本の景観美を支えてきた唯一無二の「伝統技術」を次世代へ繋ぐことです。
タイル産業を活性化させるため、タイルの認知度向上に向けた取り組みを行っているのが鈴研.陶業です。
01 鈴研.陶業の認知度を高める3つの挑戦
鈴研.陶業は1949年にタイル商社「七洋社(現:七窯社)」として創業され、1984年には自社工場を設立しました。90度に曲がった「役物タイル」の製造など独自の技術を確立する一方、現在はタイルを活用したアクセサリー事業にも進出しています。伝統産業に「身に着ける」という新たな価値を加え、進化を続けています。

タイルのゆるキャラを作るという発想から、キン肉マンのキャラクターである「タイルマン」を活用する案が生まれました。資金集めを行い、多治見駅前にタイルマンの像を設置することで認知度向上を目指しています。
鈴木社長は将来的に「タイルの漢字を作りたい」という想いがあるそうです。タイルは焼き物の建材で唯一、独自の漢字を持たない商品。字として意味を持たせることで、タイルの持つ温かみや文化的な魅力をより豊かに伝えたいという狙いがあります。この挑戦が「タイルとは何か」を産業全体で深く議論するきっかけになれば嬉しいとお話されていました。
タイル作家の白石普さんがプロデュースする国内最大のタイルの祭典、Ceramics Tile Festa「CERASTA(セラスタ)」にも参加しています。2025年はタイルのチェア・コンペティション「スワールドカップ」や、タイルで彩ったお風呂のコンペティション、左官体験などが行われました。鈴木社長も委員としてタイルの漢字に関するシンポジウムを行い、来場者がタイルを知るきっかけづくりに取り組んでいます。
02 「本物」の価値を証明した佳子様のイヤリング報道
2025年5月20日に岐阜県各務原市の「アクア・トト ぎふ」に、秋篠宮佳子様が七窯社の2種類のイヤリングを着用して訪問されたことが報道されました。着用前は2種類で年間10個ほどの売上が、着用後は1週間で2000個ほどの注文が入り、生産が追いつかない事態となりました。現在もウェブサイトでは、注文殺到によりこの2種類のイヤリングのみ発送に2ヶ月ほど期間を要すると記載されています。佳子様の影響力はタイル産業の認知度に大きく寄与していると言えます。

! 学生の声:注目ポイント!
今回、現場を訪問して取材していく中で、次の2点が印象的でした。
- 従業員の働きやすさを追求する柔軟な姿勢
特にシフト面を柔軟に対応できるようにすることで、子育て世代も安心して働ける環境づくりを行っています。地域産業が安定した雇用を生み出し続けるための、非常に大切な取り組みだと感じました。 - デザイナーの「感性」を信じる商品開発
「売れるものを作れ」と言わず、「自分が欲しいものを作る」ことを大切にするフィードバックが印象的でした。この自由な発想が、タイルの新たな文化を創り出す原動力になっているのだと実感しました。
複数大学のゼミが連携し、フィールドワーク(取材)・記事作成に取り組む「ゼミ横断型フィールドワーク」
活動の一環で学生が主体となり作成した記事です。
・連携ゼミ:三重大学 人文学部 洪ゼミ(ソーシャルビジネス論演習)








