地域の公共資源 温浴施設を起点に地域を再生させる - 東海ヒトシゴト図鑑

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地域の公共資源 温浴施設を起点に地域を再生させる

地域の公共資源 温浴施設を起点に地域を再生させる

人口減少や高齢化の波が押し寄せる中、全国各地で公営温泉や公共施設の経営が危機に瀕しています。温泉は、単に入浴を楽しむ場所ではありません。地域の高齢者の健康を支え、住民同士の交流を生み、時には災害時の避難所にもなる。いわば、地域の生活を守る「公共資源」です。

しかし、赤字や老朽化を理由に、存続が危ぶまれる温泉施設が全国に存在します。こうした深刻な社会課題に対し、「温泉を起点とした地域再生」という独自のモデルで挑んでいるのが、株式会社Kii Companyです。

01 行政所有の温泉を、再び地域の拠点へ

Kii Companyは、存続が危ぶまれる温泉施設を引き継ぎ、企画からリノベーション、運営までを一貫して手掛ける再生モデルを構築しています。

その代表例が、2024年に再スタートを切った三重県いなべ市の「いなべ阿下喜ベース」です。もともとは公営温泉だった施設をリノベーションし、温泉・食堂・サウナラウンジ、さらにはコンテナホテルを併設した複合施設へと生まれ変わらせました。


宮本社長が何より大切にされているのは、地域の人に「この町のおふろが、閉店せずに続いてよかった」と言ってもらうこと。そのため、独りよがりの開発ではなく、地域住民や市職員と丁寧に信頼関係を築きながら、「みんなでつくる施設」として再生を進めてきています。

02 温泉が解決する、3つの社会課題

この再生プロジェクトは、単なるビジネスの枠を超え、複数の社会課題の解決に直結しています。

  1. 「関係人口」の創出による地域活性化
    単発の観光客だけでなく、何度も訪れる関係人口を増やすことで、商店街の活性化や地域経済の循環を生み出しています。
  2. 健康寿命への貢献と世代間交流
    地域の温泉事業を存続させることで、住民の日常的な健康づくりの場を守っています。「こども銭湯」などのイベントも、世代を超えた交流につながっているといいます。
  3. 防災・災害対策の強化
    「いなべ阿下喜ベース」はいなべ市と防災協定を締結。災害時には避難拠点として機能する体制を整えており、地域の安全を支える役割も担っています。

03 「公共」と「民間」が手を取り合う、新しい仕組み

公共施設の民営化は、効率が上がる一方で「公共性が失われるのではないか」という懸念がつきまといます。しかしKii Companyは、民間が創意工夫を発揮し、民間だけでは担いきれない部分を行政がバックアップするという役割分担をしているそうです。その結果、温泉施設の黒字化と地域活性化を同時に実現しています。

04 学生の声:注目ポイント!

取材を通じて、特に学びの深かったポイントは以下の2点です。

  • 温泉を「地域インフラ」と捉える視点
    温泉を観光施設としてだけでなく、健康・防災・交流を支える拠点として温泉を位置づけている点に、公共性の高さを感じました。
  • 「官民協働」のリアルな成功モデル
    「民営化=民間任せ」ではなく、官と民で役割をすり合わせながら連携することで、地域にとって最適な形が実現できることが分かりました。

 


複数大学のゼミが連携し、フィールドワーク(取材)・記事作成に取り組む「ゼミ横断型フィールドワーク」
活動の一環で学生が主体となり作成した記事です。

・連携ゼミ:三重大学 人文学部 洪ゼミ(ソーシャルビジネス論演習)